
アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎の真実
こんな症状に悩んでいませんか?
- 踵の上部や、アキレス腱が歩くと痛い。
- 踵の上部や、アキレス腱を押さえると痛い。
- 足首を動かすと、アキレス腱が痛い。
- 足首を動かすとアキレス腱がきしむような音がする。
- 踵の上部やアキレス腱が赤くなって熱を持っている。
- アキレス腱が脹れて太くなっている。
- 踵の上部や、アキレス腱が靴を履くと擦れて痛む。
これらの症状は、アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包(アキレス腱皮下滑液包、踵骨後部滑液包)炎の代表的な症状です。
これらの症状は、一度発症するとなかなか治りにくいことが知られています。
では、アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎がなぜ起こるのか?
そして、何故治りにくいのかを考えてみましょう。
アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎の発生原因(一般的)
- オーバーユース(使いすぎ)
- 加齢による腱の変性
- 下腿三頭筋の過緊張
- 靴の不適合
- 踵骨の外反
一般的にはこれらが原因として挙げられており、特にオーバーユースと加齢による変性が主原因とされていることが多いですね。
特にランニングや、ジャンプを多用するスポーツに頻発するために、スポーツ障害としては代表的なオーバーユース症候群であり、下腿三頭筋の過緊張と関りがあるとされています。
また、中年以降のランナー等に好発するために、加齢による組織の変性が関係しているとされています。
つまりは。腱の加齢による劣化と使い過ぎが大きな原因となるという説です。
しかし、これらの原因は真実の原因といえるのでしょうか?
アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎発生原因への疑問
例えばランニングをしていて左にアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎を起こし、右足は健常だとします。
では、オーバーユースを主因とすると右足と、左足のランニング中の使用頻度にそれほど大きな差があるのでしょうか?
また確かに腱の変性が有り、若者より中高年に発症しやすいのは確かですが、右足も左足も同い年ですから、片側に発症することの説明がつきませんね。
下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の筋緊張がアキレス腱に張力を発生させることは確かですが、それだけなら、下腿三頭筋の筋腹に障害が起きても不思議はないですね、なぜその張力がアキレス腱に集中するかの説明がつきません。
それにもう一つの問題は下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)に緊張を起こさせる原因ではないでしょうか?
左右均等に使用しているのに、片側だけにアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎が発症しているならば、患足のアキレス腱に安静時にも大きな張力が常に働いていると考えるべきではないでしょうか?
実際、アキレス腱炎の患者さんにSLRテストをすると患側は筋性の抵抗を感じ、可動域も健側より少なくなります。また下肢後面の筋肉の緊張を緩めるように屈曲膝傾向になっていることが多いです。
このことは、足を前方向に出すときに後面の筋肉の抵抗が強まることを示唆し、むしろ歩幅の減少が考えられ、オーバーユースの概念と合致しませんね。
つまり下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)単独の筋緊張だけでは無く、大腿二頭筋(ハムストリングス)を含めた下肢の筋肉全体の緊張が関与しているわけです。
アナトミートレインでは趾骨の足底面から、足底腱膜、短趾屈筋へそこから、アキレス腱、腓腹筋、ハムストリング、坐骨結節へとつながる筋膜の連続性が示されていますから、これらの経路のどこかに異常があれば、筋の緊張は連鎖し下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の緊張を生むことになりますが、特に大きな影響を及ぼすことが考えられるのが筋の量から考えてもハムストリングスになります。
私の考えるアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎の発生原因
- 仙腸関節異常による下肢後面全体の過緊張。
- 膝関節異常による腓腹筋の過緊張。
- 足関節異常によるアキレス腱と下腿三頭筋の過緊張。
- 距踵関節異常によるアキレス腱下部の過緊張。
これらが基底にあり、さらにオーバーユース、加齢が重なり発症するのではないでしょうか?
下肢の後面に筋の張力が発生する原因の大きなものに仙腸関節の離開があります。
腸骨が仙骨に対して上前方に転位すれば大腿二頭筋長頭の起始となる坐骨結節位置も上方に移動するため、ハムストリングスは大きな牽引応力を受けます。
ズボンの裾を靴下の中に入れて、ズボンの坐骨の部分の生地を少しつまんで前屈してみてください。
少しつまんだだけで生地に大きな緊張が生まれることが実感出来る筈です。
その緊張は筋膜を介して下肢後面の筋肉全体に伝わり、下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)にも大きな緊張を生むことになります。
それでは、ハムストリングスから下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)と続く下肢後面の筋群の筋緊張だけがアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎の原因になっているのかと言えばそれだけでは有りません。
そこには、アキレス腱周辺に張力亢進が集中する理由が説明されていませんよね、下肢後面の筋群の過緊張だけならば、障害はハムストリングスに起きても、下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の筋腹に起きても不思議は有りません。
では、下肢後面の筋緊張がなぜアキレス腱周辺に限局するのか
考えてみたいと思います。
先程、仙腸関節の前上方転位が発生すれば、大腿二頭筋長頭の起始となる坐骨結節位置も上方に移動するため、ハムストリングスは大きな牽引応力を受けることを説明しましたね。
つまり筋肉の起始停止の位置の異常や、筋肉が通過している関節の運動軸に異常があれば、当該筋肉に大きな影響を及ぼすことになります。
下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)であれば腓腹筋、が膝関節をまたぎ、アキレス腱は足関節の後ろを通過します。
そして、アキレス腱は踵骨の踵骨隆起に停止しますから、膝関節、足関節、距踵関節の影響を考えなくてはいけません。
まず膝関節ですが膝関節に異常がある場合、足関節を背屈させると下腿三頭筋の上部に筋緊張が出現します。
次に足関節に異常が存在する場合足関節背屈によって、下腿三頭筋全体と、アキレス腱部に緊張が出現します。
どちらも、下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の緊張を引き起こしますから、アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎を起こす要因になります。
では踵骨の転位、距踵関節の異常はどうでしょうか、過回内(オーバープロネーション)を起こすランナーにアキレス腱炎が起こりやすい事が知られていますが、踵骨の転位、距踵関節の異常は、アキレス腱下部の緊張を生みます。
踵骨が外反、後方へ僅かに転位すれば、アキレス腱部の総長は長くなり腱部に張力が集中することになります。同時に足底腱膜の過緊張を生みますから、浮指現象もお引き起こし易くなります。
実際に、距踵関節の異常を整復するとアキレス腱下部に限局する腱の緊張が消失します。
アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎の一般的対処法への疑問
ストレッチ
アキレス腱は下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)と踵骨をつなぐ腱組織で、筋肉から筋腱移行部を経てコラーゲンを主成分に構成される腱に移行し踵骨の踵骨隆起に付きます。
腱の構造は、コラーゲン分子が集合し、コラーゲン細繊維を形成し、さらにそれらが集合しコラーゲン繊維となり、それらを束ね繊維束となり最終的に腱となっています。
腱の長さは平均20?25cm、断面積は中央部で約70?80mm2 であり、1トン近い張力に耐えることが出来ます。
つまり、繊維を束ねて糸を作り、糸を束ねて太い糸を作る構造になっています。
これは引っ張り応力に対応する形状で、人口構造物でも大きな張力がかかる構造物はこれに類似した構造をとっています。
例えば、明石海峡大橋のケーブルは127本のワイヤーを束ねて1本のストランドを形成しそれらを290本束ねて1本のケーブルを作っている。つまり36830本の小さなワイヤーの集合で作られていますね。
アキレス腱部に肥厚がある場合それは現在の腱の断面積では張力に耐えられないために断面積を大きくすることによって張力に対応する生物学的対応であるといえますね。
細い糸より、太い糸の方が張力に耐えられるのは当たり前ですね。
では、張力がかかり過ぎて炎症が出ているアキレス腱炎、アキレス腱周囲炎に対してストレッチをかけるのはどう思われますか?
ストレッチを否定するわけでは有りませんが、その時期や方法につては十分検討が必要ですね。
マッサージ
次にマッサージについてです。腱にしても筋にしても繊維の束をいくつも束ねた構造になっていますね、その繊維を横方向に揉捻すると繊維構造はもつれますよね、また強く圧迫すると繊維が微小断裂を起こしそこに過剰な張力がかかるとそこから断裂する危険性が有ります。
マッサージの方法にも注意が必要といえます。
アキレス腱炎、アキレス腱周囲炎、アキレス腱滑液包炎の根本的対処法
根本的な治癒を目指すには、大きく3つの整復を考えなければなりません。
- 第一は下肢後面の筋肉の緊張を生む仙腸関節の整復と、下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)の緊張を生む足関節、膝関節の整復。
- 第二はアキレス腱下部に限局した張力を発生させる距踵関節の整復。
- 第三に、機能不全に陥った筋と腱の整復です。
1.仙腸関節の整復
足幅を肩幅プラス10センチ程度に取り足を平行におき10秒かけて、おろし10秒かけてスクワットを行うと仙腸関節の離開に整復力が働きます。
また、歩行することも非常に大事ですね。
2.膝関節、足関節の整復
スクワットの際に膝関節、足関節を両手で優しくくるむように保持すれば内圧が上昇し整復圧が働きます。
3.距踵関節の整復
距踵関節については専門的知識と技術が必要になりますので、ここには記載できません。
4.筋、腱の整復
筋や、腱の機能不全については繊維に垂直に手の平などの広い面で優しく押圧すると繊維間の潤滑が再生し動きやすくなります。
また筋の短縮があっても水の展性によって元の長さに戻ります。
その他アイシングも非常に有効な手段です。
実は、流体圧を応用したメディカル・ハイドロバッグを使用するとこれらの処置が徒手よりもはるかに確実に行え、かつ大きな効果が期待できます。